ChatGPTに依頼する際に連続した指示を行うと大変なケースがあります。その場合には指示書や依頼書といった文書形式にすると便利です。
今回は少し俯瞰して「この指示書や依頼書をもっと上手に作成できないか」といった視点から、少し抽象的なプロンプトの使い方を探っていきます。
全体感を掴む
まずプロンプトデザイン その2「依頼方法を工夫する」で行なった作業について、私たちとChatGPTの関係性を掴んでみましょう。
ChatGPTにマーケターの役割を依頼した後そこに対して依頼書を投げていました。
やりとりしているデータについて明確にすると、以下のようにも示せます。
はじめに私たちが「依頼書」をChatGPTにわたし、次に施策などの「依頼結果」がChatGPTから帰ってくるという流れです。
ここで思い出しておきたいことは「ChatGPTが渡されたデータに強く依存する」という点です。上記の図では簡単に「依頼書」と書いていますが、この依頼書の良し悪しによってChatGPTの結果もまた大きく左右されてしまいます。
前回の記事では以下のような構成にしていますが、この内容を書くだけでも手間がかかります。指示の過不足や良し悪しについて疑問が残る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あなたはプロのマーケターです。
以下の「依頼書」をもらいましたので、こちらを元に仕事をしてください。
```
【依頼書】
目的:福島県に子供向けのテーマパークを開発し、地域の活性化と経済効果を生み出すことを目的としています。また、子供たちに楽しく過ごしてもらうことを目的としています。
ターゲット:主に子供たちとその家族をターゲットにします。子供たちの年齢層は3歳から12歳までとします。また、福島県内や周辺地域の家族旅行客や日帰り客も含めたターゲット層とします。
予算:約5億円という予算を設定しています。具体的にどのような施設やアトラクションを設置するかによって予算の使い方が異なるため、最も効果的な予算配分を提案していただけると幸いです。
期間:テーマパークの開発期間は約2年間とします。その後、オープン後の期間も含めて最低5年間は運営を行う予定です。
評価方法:テーマパークのオープン後には、入場者数やアンケート結果などを通じて成果を評価します。また、運営に関するフィードバックをもとに改善を行い、長期的な成功を目指します。
```
そこでおすすめしたい使い方が上長のような役割を用意するという手法です。
図としては以下のようになります。
まず上長の役割を与えたChatGPTに依頼書のフィードバックを求めます。その後マーケターとしてのChatGPTに依頼を投げるのですが、こちらは別記事と同じ作業になります。フィードバックの求め方や改善方法が今回の焦点になりそうですね。
それでは、さっそく依頼書の添削をしてもらいましょう。
依頼書のフィードバックをもらう
使用する依頼書は別記事(上記掲載のもの)と同様のものとします。
こちらについて、まずは簡単に役割を上司として状況説明と依頼を投げてみましょう。
あなたは私の上司です。
以下の「依頼書」をマーケターに依頼しようと思いますので改善点を教えてください。
(以下同文)
結果は以下のようになりました。
フィードバックが刺さりますね。
このように、「改善点を教えて」というだけでも依頼書の問題点が洗い出せます。
次なる私たちの動き方としては、更なる情報を集めて依頼書を書き直すことでしょうか。
しかし、企画やマーケティング初心者の場合「コンセプトの明確化」と言われてもどのように作業すればよいかピンときません。
その場合は以下のようなプロンプトも有用でしょう。
あなたは私の上司です。
以下はマーケターに対する「依頼書」となります。
企画に関する改善点を洗い出し、ブラッシュアップした依頼書を作成してください。
(以下同文)
結果は以下のようになりました。
まず改善点を洗い出すための分析を行い、それに基づいて「依頼書」をブラッシュアップしてくれていますね。
筆者は特に「予算配分・開発期間の懸念」と「評価方法」の追加が良いと感じます。以前よりも具体的な依頼書になりました。
このようにプロンプトを変更することによって「改善点の洗い出し」だけでなく「依頼書のブラッシュアップ」まで任せることができます。
この後は先に提示した図の3番となります。
ここで覚えておくと良いテクニックがChatGPTは途中で役割の変更が可能であることです。
次はプロのマーケターとして振る舞ってください。
上記の「依頼書」を元に仕事をしてください。
続けて入力することによりこれまでの文脈を考慮した上で出力を返してくれます。
なお、プロンプトの「企画に関する改善点を洗い出し~」という部分はさまざまに変えることができるでしょう。私たちの日常業務と照らし合わせるのであれば、「〜の部分が気になっているのでアドバイスが欲しい」といった伝え方になるでしょうか。極端な例ですが、「言葉遣いに関する改善点」といったように文体に焦点を当ててもらうことも可能です。
個人的に気になることとして、「依頼書」があまり依頼書としての体を成していないため(実はChatGPTにサンプル簡単に出力してもらったものでした)、まず要求の明確化など「構成の整理」をお願いするかもしれません。
依頼書を更に改善する
依頼書のブラッシュアップができましたが、さらなるクオリティ向上を目指すことも可能です。
全ての作業が一度きりである必要はなく、AIには「何度でもリテイクを出す」ことができます。
ですので出力された内容に対する返答として
ありがとうございます。
それでは、あなたが出力した依頼書について再度企画に関する改善点を洗い出してください。
その後、ブラッシュアップした依頼書を作成してください。
と好きな数だけ入力すればそれだけChatGPTに試行錯誤してもらえます。
手軽に「依頼書」がブラッシュアップできその出力をもとに依頼できるのですから、手軽に成果が得やすい方法です。
一方で、この使い方には注意が必要です。このような「曖昧な改善の繰り返し」だけだと一般的に良いとされる解答が出る可能性が高いためです。
これもまた「ChatGPTが与えられた文字情報からしか判断ができないこと」に由来しており、解決策は大まかに以下の通りになります。
- 目標, 理由を明確化する
- 改善して欲しいポイントを入力する
- 情報が足りないと(ChatGPT)判断された際に質問するよう促す
ここでも、まずなぜフィードバックが必要なのか明確にしましょう。「悩みを共有する」という考え方が近いかもしれません。「{任意の役割}にこういう発注をしたいのだけれど、{何らかの悩みの種}という観点で不安がある」というように考えるとスッキリするのではないでしょうか。
「依頼書」と一言に言ってもさまざまな構成要素から成り立ちます。もやもやしている部分をはっきりさせることによって、私たちの理想の方向に改善してもらうことができるでしょう。
関連して、改善してほしい具体的なポイントを伝えましょう。そのためには依頼書自体の構造化も必要です。例えば5W1Hに則って作成されていれば、Why(なぜ),、How(どのように)、 What(何を)などどの具体的なポイントでアドバイスが欲しいかが明確にできます(この依頼書の構造化から任せても良いかもしれません)。
最後に、何より重要なのが質問を促すことです。これはプロンプトデザイン その3「アドバイスする」でも扱った概念になります。情報が足りなくなるようなことがあれば、積極的にChatGPTから投げかけてもらいましょう。
具体的な文脈を与えれば、ChatGPTもまた具体的な解答をくれるはずです。
まとめ
以上が「ChatGPTに上長のような役割を与え、『依頼書』そのものに対するフィードバックをもらう方法」でした。入れ子のような構造になっており少し難しかったかもしれません。
そもそも、現実世界では「改善するポイントがわからないからアドバイスをもらう」といったケースも多いはずです。
したがって「依頼書のフィードバック」が欲しい場合は改善点の指示を捨てるのもありでしょう。
その場合は、役割設定を丁寧に行うといった方向性が望ましいでしょうか。マーケティングに限らず「その分野の職業や知見をインプットしておき、フィードバックは任せてしまう」というスタンスをとれば、それこそ先輩のような働きを見せてくれます。
以上で本稿は終了となります。
このように、ChatGPTはメタな視点を持つと使い方が広がります。どの作業においても「そもそも、この作業を任せることはできないだろうか」といったところから考えるとまた新しい活用方法が見つかるかもしれません。
おまけ
今回扱った内容は「ゴールシーク」と呼ばれるアルゴリズムやプロンプトエンジニアリングの手法と関連しています。
ざっくり説明すると「最大化したい目的変数やKPIを設定し、プログラムに試行錯誤させる」といったものです。現代だと広告の配信最適化、Excelだとソルバ、学問的なところだと機械学習や遺伝的アルゴリズムに関連する概念となります。
もしプロンプトのスキルをさらに高めたいという方がいらっしゃれば、上記のキーワードでネットやTwitterを検索してみてください。