プロンプトデザイン その2「依頼方法を工夫する」

ビジネスの文脈だと要件は複雑化することも少なくありません。その際、短い依頼の場合ChatGPTに正しく情報が伝わらないケースがあります。本稿では役割設定を終えたChatGPTに対し「どのように依頼すれば良い結果が得られるか」を学びます。

公開日:2023/03/19 更新日:2023/03/21

目次

  • 依頼を追加してみる
  • さらに依頼を細かくしてみる
  • 依頼書を作成してみる
  • 出力のフォーマットやテンプレートも指定してみる
  • まとめ

依頼する

「プロンプトデザイン 入門:役割を与える」ではプロンプトを以下のような構成にするとうまく動きそうだということを扱いました。

今回は視点を変え、ChatGPTの「役割」ではなく「依頼内容」の作り方を考えてみます。
テーマはマーケティングにしましょう。まず初めに扱うプロンプトはこちらです

あなたはプロのマーケターです。
新しいテーマパークの売り出し方を考えてください。

筆者は以下の結果になりました。

印象としては、オーソドックスかつ王道という感じでしょうか。

一方でこれで施策というには若干弱いでしょう。

少し期待はずれな結果にも思えますが、これはChatGPTの性能が低いということではありません。
なぜこのような返答が返ってきたのかを考えると、我々が「ChatGPTにどのような依頼をすれば良いのか」ということが掴みやすくなります。

最も注意すべき点は「ChatGPTは私たちから与えられた入力からしか考えられない」ということです。ChatGPTに私たちのような感覚器官はないため「察する」ことができません。2021年までの膨大な知識こそもちますが検索することも不可能です。

したがって今回の依頼の反省点をまとめると、「私たちの頭には具体的なイメージがあったかもしれないが、ChatGPTには伝わっていなかった」ということになります。

それでは、ChatGPTが正しく性能を発揮できるように依頼を改良していきましょう。

依頼を細かくしてみる

あなたはプロのマーケターです。
新しいテーマパークの売り出し方を考えてください。
​
そのテーマパークは地方に展開し、主に小学生から中学生がターゲットです。

結果は以下となります。

より具体的な提案が得られました。筆者が特に良いと思うのは以下の二つです。

まず「独自のブランドイメージを確立する」で示唆のある内容が提案されています。「地元の文化や風習に基づいた設計やエンターテインメント」という部分です。筆者も地方の出身ですが、たしかに地方にはその地域独特の雰囲気や文化が存在し、それを地元の人は大切にしています。地元の応援なしでテーマパークの運営は厳しいでしょう。

他には全体的に小学生から中学生に向けた施策が目立つようになりました。データを集める必要がありますが、景品を用意したイベントなどは相性が良さそうです。インフルエンサーマーケティングもYoutubeやTikTokが力を持つ現代では活きるのではないでしょうか。

このように、具体的な情報を付与してあげることでChatGPTはその情報を汲んだ上で出力を返してくれます。皆さんの自身でも、どういった情報を付与すれば良い結果が返ってくるか試行錯誤してみてください。

一方で、全て口頭で指示するのは大変です。
したがって次項では情報をまとめ、それをChatGPTに渡してみます。

依頼書を作成してみる

マーケティングの依頼にはさまざまな方法がありますが、大まかに以下が重要となるのではないでしょうか。

  • 目的
  • ターゲット
  • 予算
  • 期間
  • 評価方法


そしてここまでまとまった内容を渡すとき、私たちは「文書」という形式をとるはずです。
それでは以下にサンプルの事例を用意しChatGPTにお願いしてみましょう。

あなたはプロのマーケターです。
以下の「依頼書」をもらいましたので、こちらを元に仕事をしてください。

```
【依頼書】

目的:福島県に子供向けのテーマパークを開発し、地域の活性化と経済効果を生み出すことを目的としています。また、子供たちに楽しく過ごしてもらうことを目的としています。

ターゲット:主に子供たちとその家族をターゲットにします。子供たちの年齢層は3歳から12歳までとします。また、福島県内や周辺地域の家族旅行客や日帰り客も含めたターゲット層とします。

予算:約5億円という予算を設定しています。具体的にどのような施設やアトラクションを設置するかによって予算の使い方が異なるため、最も効果的な予算配分を提案していただけると幸いです。

期間:テーマパークの開発期間は約2年間とします。その後、オープン後の期間も含めて最低5年間は運営を行う予定です。

評価方法:テーマパークのオープン後には、入場者数やアンケート結果などを通じて成果を評価します。また、運営に関するフィードバックをもとに改善を行い、長期的な成功を目指します。
```​

結果はこちらです。

具体的な依頼を出したので、ChatGPTもまた具体性のある提案をしてくれました。初期の依頼と比較するとマーケティング施策の粒度が全く異なっています。見積もりについてもこちらに伺ってくれているのが嬉しいです。

とはいえ、出力してもらった内容でそのままプロジェクトを始められそうでもありません。最後に質問が求められていますし、これをたたき台にしてブラッシュアップしていくフェーズなのでしょう。

私たちが質問に答えていけばChatGPTは新たな文脈を獲得し、さらにクオリティの高い返答をくれるはずです。
(ModelにGPT-4を利用した場合より精度が高く、それぞれの施策について費用配分まで提案してくれることを確認しました。以下に参考画像を添付しておきます)

提出物を指定してみる

最後に私たちが受け取る形式まで指定してみましょう。具体的に欲しい提出物があったり、チームで働く際にフレームワークを共有している場合などに便利です。
比較のため以下の文言のみ付け加えます。

[提出方法]
「提出フォーマット」に従うこと。
​```
【提出フォーマット】

[Strength:強み]
箇条書きで3行にまとめること。

[Weakness:弱み]
箇条書きで3行にまとめること。

[Opportunity:機会]
箇条書きで3行にまとめること。

[Threat:脅威]
箇条書きで3行にまとめること。
```

出力は以下です。

簡単なSWOT分析をやってもらいました。このように、形式を依頼内容に入れれば出力結果についても私たちの思い通りのフォーマットで受け取ることができます。

これはさまざまな場面で応用が効く技術です。

文章の要約であったり、プレゼンテーションであったり、脚本であったり、私たちはどの作業をするにも理想とする形があります。手間としてはそこまで大変ではありませんので、もし望むテキストの形があれば積極的にChatGPTに提供してみると良いでしょう。

まとめ

本稿では

  • ChatGPTは入力以外の文脈を知り得ない
  • 依頼内容を細かくすることによって出力の精度が向上する
  • 依頼書の形式にまとめることにより取り回しやすくなる
  • 提出物の形式を指定することでより理想的な出力が得られる


といったことをお伝えしました。
概念としては以下の図のようになります。

提出物の指定ついて細分化して理解したい場合はこちらです。

ここまでくるとChatGPTの全体感が掴め、多くの活用例が見えてくるはずです。

あくまで本稿の形式は一例ですので、より使いやすいもの・良い出力が得られそうなプロンプトをみなさんの手で開発してみてください。